ストックオプションをもらったら
会社からストックオプションをもらう。
これはとっても素敵な経験です。会社から期待・評価されているということですし、自分の経済的なインセンティブにもなります。友人や家族に「ストックオプションもらったよ」と言うときは、なんだかすこし照れくさく、そして誇らしい気持ちになるでしょう。
実際に私のまわりにも何人かもらった人がいますし、与えた経営者もいます。私自身も仕事においてストックオプションの発行や付与について携わりましたが、もらった人がその意味をあまり理解していないのでシンプルに書いてみます。
注意としては、このあたりは法律等の変更が多く、あくまで2020年8月8日時点での一般的なハナシということでお願いします。よく聞かれるのが以下。
です。「会社から渡される契約書は難しくてネットで検索してもよくわからない」と何度も聞かれました。
(1)ストックオプションとはなにか?
ストックオプションというのはただの「権利」です。株式でも現金でもなく「株式を買う権利」です。その「権利」を行使してあるタイミングで株式にします。その場合、あらかじめ決めた価格で株式を購入できます。会社が上場していなくても会社の価格(価値)というのは決まっています。以下のケースを想定しましょう。
- 現在、未上場の自社の価値は10億円である(専門家による算出が必要)
- 上記算出によると、一株5万円とされた
- あなたは一株5万円で「300株」分の自社株を買う権利を得た(ストックオプション)
このケースに置いて、仮にその会社が上場して一株45万円となったとしましょう。この場合、あなたは、
- 一株45万円の株を(あるタイミングで)一株5万円で買う「権利」がある
ということです。一般の株式市場では45万円じゃないと買えない株が、5万円で買えます。うれしいですね。ただここで大切な点は、「ストックオプションは上場している・もしくは上場を目指している企業」じゃないと意味がないということです。権利を行使して、株式の売却をするためには上場していないとスムーズにいかないからです。
(2) ストックオプションの種類について
ストックオプションには大きく分けて、以下の2つがあります。
いろいろと違いはありますが、社員(ストックオプションをもらう側)の立場でもっとも大きく影響するであろうことは「個人にかかる税金」です。
- 適格 → (株式を売却して得た利益に対して)個人にかかる税金が約20%
- 非適格 → (株式を売却して得た利益に対して)個人にかかる税金が最大55%(所得税45%+住民税10%)
となります。上記が主な理由というわけではないですが、ほとんどの場合、会社からもらうストックオプションは税制適格になっているはずです。ではいよいよ、
(3) いつ現金化できるのか?
という話に移ります。税制適格ストックオプションの場合、以下のような手順になります。
- 権利付与から2年経過〜10年までの間に権利行使可能(株にできる)
- 一年間に権利行使できる範囲は1,200万円まで
- 会社にお金を振り込まないといけない
つまり、2020年8月8日にストックオプションをもらった場合には、
- 株にできるのは2022年8月9日以降
- 一株5万円で「300株」分をもらったとしても、2022年に行使できるのは「240株」分(=1,200万円)まで
- 仮に2022年に「240株」分を行使する場合、あなた→会社に5万円×240株=1,200万円を振り込む必要がある
となります。その時点での株価が一株45万円になっていたら、
- 一株あたり40万円の利益
- 240株売却すると9,600万円の利益(=40万円×240株:税金考慮せず)
ですが、最初に権利行使分の現金(この場合1,200万円)は振り込まないといけないということですね。そして残りの60株(=300株-240株)の権利行使は2023年以降になります。
また、ストックオプションを発行する会社によっては「ストックオプションを権利行使して株にしても、その株をすぐに売却してはいけない」等の契約を交わすところもあります。
こう説明していくと「現金化への道のりは長いのね・・」と言われることも多いのですが、それでもストックオプションをもらえることは魅力だと考えています。
自身の仕事を全社的な観点でやろうという意識になる人も多いです。これはスキルアップにつながりますし、さらには会社から「ストックオプションを」という話が出たら良い機会なので、ぜひ株式投資や企業価値算出なんかも勉強されてはいかがでしょうか。
今までと違った視点で会社や株式、経済を見ることができるようになる機会です。